世間はめっきりお休みモードですが、
私たち宅配便班の生活パターンは終電で帰宅、翌日は朝から大学へ
といういつも通りのパターンです。
どうも、お久しぶりです。宅配便班の原です。
年末、私たちゼミ生は23,27,28日と
研究室にて先生との相談を重ねると言う怒涛の相談週間をこなしております。
(年末にも関わらず指導して下さる先生や院生には感謝してもしきれません!)
そんな中、私たちの班は28日の相談で
ボロボロなプレゼンテーションを披露してしまったことにより
「主軸となるストーリーラインを5スライドで」との指示が下り、
その日は24時間開設している大学のパソコンルーム(22号館)で
深夜まで作業を続けたことで、先生から「5スライドOKです」
とのお言葉を頂くことができたわけです。(前回のブログを参照くださいね!)
そこで、私たちは次なるステップである
「アウトラインを作成する」という作業を始めました。
先生からOKを頂いた5スライドの流れをもとに肉付けするという形で作業を進めようと、お互いにアウトラインを書き始めたわけですが…しかし、このアウトラインを作成するという作業。言いたいことの流れをパワーポイントでまとめているのだから、すぐに出来るだろう!と、考えていましたが…
そんな浅はかな思いを持っていた私は愚かでした。
アウトラインというのは、ただ論文の流れを書けばいいというものではありません。
1段落の中で伝えたい内容を一文でまとめ、整理していかなければならないのです。
また、本当に伝えたいことを的確に伝えている言葉の選択ができているのか、
言葉の定義は統一されているかなど、論文を書く基礎となるわけですから、
実はなかなか手強いものなのです。
さらに私たちの班は大きな課題にぶつかりました。
それは「先行研究が曖昧」であるということです。
私たちはフィールドワークや公刊資料、新聞や雑誌記事など、
まずひたすらに事例ベースで宅配便業界を調べ、面白い現象を探してきました。
そのため、学術的にどういった視点でこの事例を説明することが
現象をさらに面白く見せることに繋がるのかというプロセスを後回しにしていました。
そのせいで、いざアウトラインを書こうと思っても、
「先行研究から導いた問題意識」がなかなかうまく作成することができなかったのです。
さらに学術論文においては「新規性」も求められます。
自分たちの研究が先行研究よりどういった部分で新しいことを述べているのか、
ここのレベルにまで達すると、やはり学部生の私たちには限界があります。
そのため、30日にある研究室での相談で、先行研究を相談することにして、
とにかく5スライドの流れで事例ケースの部分を
しっかりアウトラインにしていくことにしました。
私たちはケース部分を描く際に
まず、自分たちの言葉でケースを描いていき、骨組みを作りました。
そして、今までのインタビューを文字に起こした文章や雑誌記事を見返し、
その骨組みを支える証としてインタビューや雑誌記事で得た内容を組み込んでいきました。
この作業は定性研究において、有意義なステップであったなと振り返ると思います。
特にグループで書くときには。
後々、メンバーのそれぞれがケースを描く時にぶれずに書けるようになるからです。
私たちはケース部分を1日、導入や考察などを半日で書き上げ、
そこからお互いが書いてきたアウトラインの中で
いい表現だった箇所を統合しながら完成させていきました。
そして、2011年最後の相談日を迎えました。
研究室でアウトラインを読んで頂いた結果、
ケースの描き方に関しては細かい注意に留まり、
やはり先行研究が問題点としてあがりました。
私たちは先生や院生に日本通運と佐川急便について描ききれなかった情報を
盛り込みつつ、ケースの説明をしました。
その情報から先生や院生は
「○○という理論で説明できるかな」
「△△というレンズでもできそうだけど、日本通運は当てはまらないなー」
と、学術的なアプローチをたくさん提示して下さいました。
そして、先生のパソコンを使いながら、
アウトラインを1から作成する作業が始まったのです。
導入部分を作成し、さらに先行研究部分も先生や院生のお力を借りて、
ある程度の形にまで仕上げることができました。
この日で整理した私たちの先行研究は以下の通りです。
・情報の連鎖
・経験学習
まず、“情報の連鎖”というのは、
主に経済学の分野で盛んに議論されており、
『自分が持っている私的情報に関心を払うよりも、周りの人の行動を真似することが合理的に思えることによって生じる現象(Bikhchandani et al. 1992)』のことを言います。
宅配便事業は、ヤマト運輸が市場を開拓した後、同業他社が35社参入します。
しかも、そのサービス名は「クロネコヤマトの宅急便」になぞらえて、
動物名をモチーフにしたものばかりでした。
(詳しくは最初のブログを参照してくださいね!)
この情報の連鎖の中で、企業はどのような行動を採るのか…
先行研究では数多くの議論が重ねられているわけです。
そして、この情報の連鎖は「他社(他者)の行動を観察」して起こる現象です。
このように他社を観察し学習することを『代理学習(Bandura 1969; 1977)』といいます。
さらに、この代理学習は『間接経験からの学習』とも言われています。
どういうことかというと、“経験学習”という分野においても
他社の行動を観察し、学びを得る現象を説明できるのです。
“経験学習”の中でも最も基本的な経験の特徴として
Levitt and March (1988)は、
組織が直接的に知識を得ることを『直接経験からの学習』、
他の組織から間接的に知識を得ることを『間接経験からの学習』
という分類で整理しています。
さらに経験の成果の良し悪しに焦点を当てた分類として
“成功”と“失敗”という軸があります。
(e.g., Baum and Dahlin 2007; Greve 2003; Miner et al. 1999; Sitkin 1992)
中でも、この成功と失敗という分類での研究では、
成功経験と失敗経験のどちらが学習において効果的なのかという議論が主となっています。
日本通運と佐川急便はそれぞれ
“ヤマト運輸の宅配便事業”という他社の成功経験から学習をしています。
同様の間接経験から各社、どのようなことを学習したのか、
はたまたその学習のプロセスによってどういった違いが生まれたのか
という視点から事例を見ていこうということになりました。
アウトラインを研究室で完成させた私たちはさっそく執筆活動に移るわけですが…
さらに先生はその過程に入る前に必須アイテムを与えてくださいました。
それは“モデル論文”です。
モデル論文とは、自分たちが論文を書くスタイルのお手本論文です。
論文というのは、定性研究と定量研究によってそれぞれ構成が異なります。
定性論文の中でも先行研究の記述が分厚いものやケースの記述が分厚いものなど
本当に多様なのです。
私たちの論文は、定性的な事例研究であり、
中でも2社の比較ケース、そしてインタビュー記事を盛り込みながら
分厚く記述することになります。
先生は数多くの書籍の中から沼上・浅羽・新宅・網倉の書いた
『対話としての競争 ―電卓産業における競争行動の再解釈―』を提示して下さいました。
この論文は電卓産業の中でもシャープとカシオを取り上げており、
それぞれの企業の役員の方々からのインタビューをそのまま盛り込んで記述されています。
宅配便市場を取り上げ、
さらに日本通運と佐川急便の比較ケースという意味でも
今回の研究にぴったりなモデル論文をいただくことができました。
今回の相談を通して、
アウトラインとモデル論文を手に入れた私たちは
年末から年始に向けて、論文執筆の段階へと進むことができそうです!
追伸:
今年は多くの人の繋がりに助けられ、素敵な一年を送ることができました!
(先生や院生、先輩、同期はもちろん、インタビューにご協力頂いた多くの方々)
出会った全ての人に感謝して、年越しを迎えようと思います。
今年一年、本当にお世話になりました。
良いお年を!!